AI とデータが変える購買の未来—今、求められる次の一手とは?
年度末に向けた戦略立案や業務改善の取り組みが本格化するなか、購買業務の在り方にも変革の兆しが見え始めています。
今回は、「最新テクノロジーで変革—AI 活用とデータ解析の可能性」と題し、間接材購買をはじめとする購買業務全般における AI およびデータ活用の最新動向と、その実務への応用可能性について深掘りしてまいります。

ポイント
購買部門は今、単なる調達機能から“戦略的価値創出部門”への進化を迫られてい
ます。その鍵となるのが AI とデータ解析の活用です。
背 景
2025 年 9 月実態調査では、企業の 68%が「購買業務における非効率性」を主要課題に挙げています。また、回答企業の 62%が「データの活用不足」、56%が「業務属人化」も懸念しており、購買プロセスの見直しが急務である実態が浮き彫りとなりました。
一方、2025 年 7 月の実態調査では、AI やデータ解析ツールの導入により「発注予測の精度向上」「コスト管理の透明性確保」「サプライヤー評価の自動化」など、具体的な改善効果を実感している企業も増えています。
中でも注目されるのが、「購買業務のデータドリブン化」です。従来は担当者の経験に依存していた発注・選定・評価などの業務が、AI アルゴリズムによって定量的に判断されるようになりつつあります。
例えば
ある大手製造業では、AI による購買データの解析結果をもとに「最適発注日」「推奨仕入先」「異常検知アラート」などをリアルタイムで表示。これにより、属人化していた調達業務が標準化され、誤発注や在庫過多といったリスクが大幅に減少しました。
また別の企業では、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用し、見積取得から発注処理までの一連業務を自動化。従来 1 件あたり 30 分かかっていた作業が 5 分以下となり、年間 1,000 時間以上の工数削減を達成しています。
さらに、AI を活用した「サプライヤーレビュー機能」を導入した企業では、納期遵守率や価格変動、品質クレーム件数といったデータが自動収集・分析され、選定プロセスが定量化されました。その結果、信頼性の高いサプライヤーとの取引比率が向上し、納品トラブル件数は前年比 25%減となっています。
ポイント(再提示)
AI とデータ解析は、購買業務の“見える化”と“判断の自動化”を同時に実現し、部門の生産性と戦略性を飛躍的に高める力を持っています。
見通し
では、今後の購買部門に求められる方向性とは何でしょうか。
1. 業務の標準化とデジタル前提のプロセス設計
業務を可視化・標準化し、AI や分析が活きる仕組みを構築する
2. 部門横断的な情報連携とデータ基盤の整備
購買部門と経理・生産・営業などの情報共有を促進し、判断の一元化を図る
3. サステナビリティ・ESG 対応の強化
調達先の環境対応状況などもデータ化・評価対象に加え、企業価値向上に貢献
また、同調査では「今後 1 年以内に購買業務のデジタル改革に着手したい」と回答し
た企業が 42%を占めており、変革への意欲は確実に高まっています。
